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2019.3月 会社発展の歴史〔リーマンショック〕No6

会社は、1949年6月に創業してから今年の5月で70年になります。この「会社発展の歴史」を書き始めた時は70歳でしたので、すでにあれから2年が経ち、余生を過ごす時間も限られて来ました。段々と記憶も薄れて来ましたが、今までも何度も会社の危機を迎えましたが、私の記憶の中で経験した事がない大きな出来事は、リーマンショックでした。これは、米国のリーマンブラザーズという金融会社が倒産したことをきっかけに、景気後退が全世界に広がり金融危機と言われたものでした。日本でも1990年バブル経済が落ち込み、そこから失われた20年と言われたように現在の低成長時代が始まったわけですが、それと同じような課題でサブプライムローンといって、住宅を仮に2000万円で購入したとすると、その価値が数年で上がり3000万円で売却できる状況なので、多くの方々が銀行からお金を借りて財産を増やそうとしたわけです。しかしこのようなあぶく銭は本来あり得ない事で、家を使用すれば普通は価値が下がるわけなので、結局は借金をして家を購入したがその返済が出来なくなり、その結果お金を貸した銀行は返してもらえないので、破たんしてしまったと言うことです。いわゆる金融バブルというものです。

このリーマンショックが起きる前に、何かおかしいと言う兆候がありました。自動車業界独特のシステムの一つとして、内示と言って向こう3カ月の発注予測数が掲示されます。実はそれまで順調に注文が来ていたのに、2008年6月から内示割れ(内示数より実際の注文数が少ない事)を起こしていました。

毎年8月の長期連休には、PM活動として機械修理や機械保全に関係する部署の人が交代出勤をしていました。しかしこの調子でいけば、無理をして休日に出勤しなくても、9月の稼働時間の中でも機械を順次止めながら行う事が出来ると判断をしました。その結果、経費低減をすることが出来ました。

9月にリーマンショックが発生してしまい、その月から売上が前年同月対比毎月10%以上減少をしていきました。結局は、2009年2月が最低の落ち込みで売上が前年同月対比70%減少となりました。

世間では大騒ぎで賃金カット、賞与ゼロ、リストラも行われていました。その様な中、売上がマイナスになるのはいつの月か、と思った時もありました。よく考えて見ればすぐわかる事でゼロになる事はあってもマイナスになる事はあり得ないのに、それ位心が動揺していました。

こうした環境下でしたが、社長としてやるべきことを一度落ち着いて整理をして考えて見ることにしました。結論は、まず会社をつぶさない事、早く売上を回復させる事と考えました。

①会社をつぶさない事

なぜ、会社がつぶれるかというと、お金が回らなくなる事。短期的に赤字になっても会社はつぶれません。会社にとって一番怖い事は支払うお金がない事。会社が赤字になると支払うお金が不足します。足りないお金は銀行からお借りします。運転資金の調達です。ということは社長の仕事はこの「銀行からお金を借りてくる事」が今の最大の仕事です。これには日頃の行動から信用を得ていることです。そして借りたお金を将来にわたってどう返済をしていくかを、きちんと説明をして、返済の安心をしてもらえる努力をすることです。

今私は会社にいる事よりも、銀行に日参して銀行からお金を出してもらえるような交渉をしなくてはいけません。会社にいる事はできませんでした。

②早く売上を回復させる事

会社にいる事が出来ないので、ここは社員の皆さんにお願いして、まかせるよりほかありませんでした。日頃改善できなかった事をやることはもちろんでしたが、まず売上を回復するにはどうするかという事が最重要課題でした。

実は、会社の将来を描いた2010年ビジョンが若い社員を中心に出来上がっていました。今まで多忙でお客様の新規開拓が思うように出来ていませんでした。今からどのようにしようかと考えなくてもすでに営業の方向性は示されていたので、これを実行するのみでした。会社にいなかった社長ですから、ここからは後から聞いた話ですが、それはみごとな行動をしてくれていました。

新規顧客を開拓する時に、営業だけで行かずに生産技術の部署も一緒に行ったということです。経済全体が冷え込んでいる時に仕事をもらいに行ってもどのお客さまも仕事をくれません。逆に言えば、我々のお客様の所に営業を掛けられて今でも仕事がない時に、他社に発注されたらこちらもたまりません。お互いにそんな状況でした。要するにすぐ仕事をもらうのではなく、どんな仕事があるのか、お客様の技術部の人に会いに行っていたのです。自社に合う仕事がどのようにあるのかを、調達ではなく技術の人より、情報を得ようとしていたわけです。すばらしい発想です。これを聞いた時は感動をして、心より感謝しました。正に、経営者と社員の信頼関係が築き上げられたのです。

この経験から社員さんから学んだことを、まとめました。

私の経営者としての想い~『人間尊重の経営』
 ・「人」が、最大の資源
  経営資源は、「人・物・金」というが対等ではない
 ・「人」は、資産
  決算上は、人件費(損益計算書P/L)と言って、費用扱いするが、
       資産(貸借対照表B/S)の自己資本に相当するものとの認識
 ・経営者の覚悟として、この考え方を必死に銀行に訴えた
 〔会社にいることができず、社員に任せた⇒社員との強い信頼関係が生まれた〕

◎損益計算書P/Lとは、
日頃は、「売上」をどう上げるか、次に「材料費・外注費」をどう下げるか、その結果会社に残る金を「粗利益(社内加工高)」という。そこから社内で使う必要なお金を経費という。人件費やその他経費(刃具費・切削油・電気等)があります。その残りが、利益になります。

◎貸借対照表B/Sとは、
会社が創立以来、積み上げてきた経済活動により、お金がどう使われているのかを表したもの。不況に強い体質は、利益を積み上げて来た自己資本(率)が高い事。人をお金で換算する事は出来ませんが、社員の皆さんが成長してきた総和で、強い体質の会社が出来ている。『「人」は、資産』という意味です。

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